1999年度は研究計画に従い、政府と制度の市場補完的役割の基礎的、理論的研究として、政府と制度を機能させるための改革(第2世代改革)における課題を明らかとし、とくに政府の能力(官僚組織の効率性、政策立案能力、市場監督機能)などの基礎的研究を行った。こうした研究は、例えば市場自由化のなかで必要とされる政府の役割として典型的な事例である、金融市場における健全化規制や監督機能などを議論した「産業発展と金融システム-新経済自由主義下における課題-」(1999年10月)に結実している。 また、より一般的な観点から、政府と制度の機能改革のために必要とされる第2世代改革の課題を議論したものとして「ラテンアメリカの新展開-第2世代の政策改革」『世界経済評論』(2000年2月)がある。ここでは、とくに、政府機能を改善するためのインセンティブの問題を議論し、民主化と市場自由化、グローバリゼーションが政府自体に政府能力改善のインセンティブを与えることを明らかとしている。 また、「ブラジルの通貨危機-Fundamentals vs.Self-fulfilling Attack」『経済経営研究年報』(2000年3月)では、通貨危機の問題を扱う中で、自由化政策とその他の経済政策の整合性の重要性を議論している。これも、政策決定における政府能力とかかわる問題である。
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