研究概要 |
中国における非鉄金属の需給と輸出入形態を分析し、日本の非鉄金属産業への影響を考察するとともに、鉱物資源に係わる今後の日中関係の方向を探った。 中国は鉱物資源に恵まれ、全土に大小2,400以上の非鉄金属鉱山を持つ。市場経済体制下で急成長を続ける中国では、鉱物資源の消費量が急上昇し、それを賄うために鉱山開発や製錬が急ピッチで進められている。鉱物資源開発に係る組織的・法的枠組みは、中国政府が1983年以来進めたきた行政機構改革、国有企業改革、法整備などによって、一応市場経済に見合った形に整いつつあるものの、一方現場に目を向けると、計画経済時代の中小の鉱山や製錬所も少なからず存在し、まだ市場経済化に対応しきれていない部分も多く見受けられる。97年における中国の工業固体廃棄物発生量を産業別に見ると、採掘業、鉄鋼、非鉄金属製錬業など工業分野が上位を占め、全発生量の6割以上を占めている。これらの固体廃棄物の多くは、古いシステムの中で、生産に追われている鉱山や製錬所から発生したものである。環境問題には中国も強い危機感を抱いているが、資金不足のためそれに取り組むことができないのが現状である。 かつて日本は鉱物資源開発に係る深刻な環境汚染を経験した。日本はこの苦い経験を踏まえ、官・民をあげて「鉱害」対策技術の開発・研究に取り組み、25年以上もの長きにわたりそのノウハウを蓄積してきた。今後の対中国技術協力では、過去の日本の教訓をいかすよう、「鉱害」防止技術面の比重を高めていってはどうだろうか。
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