研究概要 |
水産加工業界は小規模の経営体によって構成されている。したがってどの地域でも協同組合が設立されている。本年度は水産加工業の産地組合を中心に調査を実施し、現状と課題、問題解決の取り組みを把握した。調査地域は焼津、下関、福岡、唐津、長崎、釧路の6つ産地で、この他に大手水産会社またはその子会社とこれらの労働組合の調査も行った。 加工経営体を協同組合という枠の中で取り上げると、組合の構成員である各経営体間の共同と競争の関係がどのように展開されているかが産地全体の事業成果を見ていく上で重要な論点となる。協同組合は各経営体の協同組織であるが、一方で同業者の集まりであるから互いに市場での競争関係にある。共同の製品開発を国の補助事業とする助成政策がこれまでも展開されてきたし、地域産業政策は今後もこうした政策基調にあるかに見える。しかし上記の産地組合を調査した限りでは、こうした産業政策は成果を上げてこなかったしこれからも成果をあげる可能性は少ないと考えられる。さらに詳細に検討しなければならないが、市場規模が一定あるいは縮小する中で展開される競争では、材料の購入ルートも販売先のルートもまた当然ながら製造のノウハウも非公開という事業体質が一般的であるからである。 協同組合では事業ごと(信用、購買、汚水処理)に細分化して組合を設立しているところもあれば、製品単位で設立しているところ、地域全体でほぼ一組合を設立しているところもあった。また現在活動している組合をその機能から分類すると、施設管理・運営型,一次加工請負型,ブランド管理型,最終工程請負型を析出することができる。すでに組合機能は停止し行政の情報伝達機関となっているところもある。こうした地域では、同じ資本や資本提携による企業連合が発達している。水産加工を担っていく事業主体は各産地ごとに異なっており、政策内容もこの実態にどう対応するか迫られている。
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