水産加工の産地の構造変動では、企業間格差が顕著になっているという側面と、輸入品の影響から産地の地盤沈下が進んでいる側面が指摘される。大手水産会社の産地での事業展開は、縮小の方向に進みつつも、子会社化して事業展開している場合には、製品構成を産地の特産品に転換を図っている事例がある。地域の産業を構成する一主体として地域に内在化するプロセスが始まっている事例であるが、進出企業と現地の企業では、企業能力のギャップから影響を与え合うといった関係は少ない。 協同組合は経営体の協同組織であるが、一方で同業者の集まりであるから互いに市場での競争関係にある。国の地域産業振興策では、共同の製品開発への補助策が展開されてきたし、今後もこうした政策基調にあるかに見える。しかし、産地組合を調査した限りでは、こうした振興策は成果を上げてこなかったしこれからも成果をあげる可能性は少ないと考えられる。市場規模が一定あるいは縮小する中で展開される競争では、材料の購入ルートも販売先のルートもまた当然ながら製造のノウハウも非公開という事業体質が支配的であるからである。政策の受け皿でもある協同組合は、形骸化が進んでいる。その原因としては、出資割合では大きな組合員間格差が生じていること、組合員の事業規模格差も顕著であることがあげられる。組合の活性化のためには、組織目標の再定義とそのためのマネジメントスタッフの確立が必要であると考えられる。 以上の問題状況では、地域産業政策の担い手として、地方自治体の政策立案能力の形成が重要である。組織改革では、政策遂行能力の向上策として、産業間の横の連携を図っている。しかし調査では、この機構改革に対応した人事政策上の具体策をとっている事例は少なかった。
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