(1)技術的な競争優位を持つ中小企業は、特殊な機械でも簡単に出せない加工精度等を短期間に出せる術(腕)を保有している。しかも、それは単に熟練者の腕に依存するだけではなく、技術的に低い水準ではない少量の仕事を、短期間にまとめあげ顧客の要求に応えることができる点で重要である。(2)日本のベンチャー企業の研究・技術開発活動は、企業規模とは無関係である点で上場企業とは異なること、ベンチャー企業は知的財産権獲得指向が強いほどIPO前後の成長が高く、また売上高なども大きいこと、ベンチャー企業の研究開発活動は製品改良などを経て、特許と無関係に収益率を高めているかもしれないと示唆された。(3)高市場シェアを有する中堅・中小企業について、中堅企業では、特許等が売上高の拡大とほぼ同じ割合で増加するのに対して、小企業では、売上高の拡大する割合のほぼ半分の割合でしか特許等の増加していなかった。ただし、従業員一人当たり特許保有件数が、各企業の高市場シェアに貢献しているとは認められなかった。(4)日本の店頭公開企業において、成長性が高いのはサービス部門企業であり、日本の店頭公開企業の利益率は上場企業のそれを下回っていない。店頭公開企業は新製品開発を重視している企業が多く、それが収益性の上昇に寄与している。「中核資産」は組織固有のノウハウとか流通チャネルなどと自覚されていたが、それらは収益性や成長性を高めているとは認められなかった。(5)中小企業が保有する生産技術の中核部分は、新製品の場合、特許を取得して法的に防御しているが、製法や素材などの場合、ノウハウや企業機密の形で競争優位が維持されているようである。特許やノウハウは顧客要求の充足要因などと相まって相対的に高い市場シェアの裏付けになっていると思われる。
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