本研究の目的は、いわゆるバブル経済崩壊後の長期不況を経済構造の再編期と考え、1980年代の日本経済を支えていた機械金属系中小製造業とその集積群が90年代にどのような構造変動を起こしてきたのかを考察することにある。平成11年度は、東京都大田区および山形県山形・米沢地域、福島県福島・郡山地域において企業経営者・政策担当者に対する聞き取り調査とアンケート調査を行った。調査によって得られた主な知見としては、(1)東北地方においては、1980年代の高速交通網の整備により、加工組立産業の生産苦情が展開してきたが、1995年の円高以降、新規展開は減少し、内発型の発展が急がれていること、(2)機能面では生産機能が大きく、マーケティング・研究開発機能の立地が遅れており、その面での人材開発基盤の整備が待たれていること、(3)生産者サービスの基盤整備が遅れ、首都圏に大きく依存しており、その面での経済開発・社会開発が待たれていること、(4)製造業の内発型発展を促進するためには、マーケティング・研究開発なでの知識創造機能の発達が必要とされる。そうした機能を活性化するには、地域内での組織間ネットワーク学習が必要であること、(5)しかしながら地域的な産業集積の規模が制約となり、各地域でそうした学習が可能になるための条件をワンセットで揃えることが困難であることから、産業地域的でないような学習ネットワークの構築を模索する必要があること、などが挙げられる。
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