研究概要 |
今年度の研究では,第1に医療制度と医療の基礎研究をそれぞれ公共経済学における社会的共通資本として位置づけ,医療制度,健康資本,技術進歩を明示化した理論化を行った。そこでは公共経済学の理論に,社会的共通資本概念を導入し,医療制度,健康,基礎研究の相互の関係を検討した。国民の健康状態を健康資本として捉え,それが消費者の効用をもたらし,さらに生産においても投入される資本として定式化した。このような理論化によって,健康資本と医療,科学技術の関係が明示され,医療に対する資源配分,所得分配の問題の評価が可能になった。 第2に,医療福祉機器を事例として取り上げ,その技術開発がどのように国家レベルで公共的に形成されるかを検討した。そこでは技術変化をもたらした社会的基盤として大学等の研究機関の役割を考察し,研究機関にどのような資源配分を行うべきかの実証研究を行った。 第3に,公共政策とM&Aの観点を強調して,医薬品企業のM&Aを検討した。これは医薬品の研究開発の効率性が企業規模によって影響されるかを検討する研究の一環として行った。 上記の第l,第2の研究内容の一部は「医療,技術,社会的共通資本(仮題)」として共著単行本の1章として出版準備中である。第3の研究は「医薬品企業のM&Aの費用と効果-日本における企業買収の可能性-」『医療と社会』2000.5月で発表する。.
|