研究概要 |
この研究では国民の健康水準,医療制度,医療技術,社会的共通資本の関係を検討した。第1に国民の健康水準がどのように向上するかを検討した。本研究では,OECD諸国のサンプルを利用してそれぞれの健康生産関数を測定した。国民1人あたりの医療支出額が必ずしも健康水準の増加に直結しないことが示された。他方,医薬品消費額の増大,衛生状態,教育程度の向上と,喫煙率の低下は,有意に健康水準を増加させることが示された。また,対象を日本に限定して都道府県サンプルを使用しても同様の結果が示されることがわかった。(この検討の一部は論文にして日本経済学会大会2000年で発表した。) 第2に,健康の価値推定を試みた。ここではCutler等が示した健康価値の測定方法でなく,国民の生涯の消費を尺度にし,さらに健康価値を社会的共通資本と関連させて定義,測定できることが示された。(実証研究には基本データが不足するため,現在作業中である。) 第3に,保険制度と医療技術の関係を,薬価基準制度と医薬品研究開発を対象にして検討した。そこでは薬価基準制度における薬価設定によって医薬品研究開発の方向付けと水準が大きく影響されることが示された。(その内容は独立した論文として投稿準備中である。) 第4に医療における研究成果が知識としてどのように国際的に移転するかを検討した。そこでは医薬品を対象にして,特許データの分析を試みた。その結果,知識の移転は同一企業や同一国家内の移転は必ずしも容易でなく,むしろ競争する研究チーム間の移転が重要であることが示された。(その内容は国際ビジネス研究学会2000年大会で報告した。)
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