今年度の研究は、補助金の内定通知を得たのが10月だったため、年度後半の研究計画として限られた時間の中で資料収集、調査計画の準備と実施を進めなければならなかった。 研究対象は、日本とドイツ及びフランスの自動車・電機メーカーにおける雇用管理と人材育成についての現状調査であった。両産業部門とも、ボーダーレス・クロスM&Aが急速に進み、完成品メーカー、部品メーカー、システムサプライヤーいずれのレベルにおいても、急激なリストラクチャリングが進行している。なかでも、従業員の雇用管理においては、事業所それ自体の統廃合といったドラスティックな改編が行われている。日本においては、特に、産業活力再生法の実施にともなう事業構造の再構築は、工場レベルの従業員の雇用不安を増長している。ドイツ・フランスの場合は、日本のメーカーよりもより直接的にエ場移転・海外転出が進み、1990年代に日本型経営システムから吸収したOJTや小集団管理を超えて、製品開発レベルで優れた人材を育成することに成功している。また、コアとなる従業員の人材育成に関しては、調査対象となった日本企業においても、成果主義賃金の導入、年俸制の拡大、カフェテリア・プランの採用など事態は急激に変化している。かつてヨーロッパで克服すべき賃金システムとされたものが、形を変えて日本企業において採用されるといったハイブリッド型の人材処遇システムが浸透しつつある。
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