本年度の研究の着目点は、日本における労働福祉政策の公的な部分と私的な部分とがどのように役割分担されて供給されうるのか、それによって労働福祉政策の効率性が総合的にどのくらい上昇するのかを検討することにあった。 日本における労働福祉政策の評価基準として、本研究では「選択肢の多様化」をあげている。すなわち、各個人がそのライフコースの進展に応じてさまざまな意思決定に直面するとき、どの程度多様な選択肢が用意されるのかを重要な問題と着目している。とりわけ、欧米の各国と比べたとき、今後の日本の労働福祉政策の特徴は、公的部門のカバレッジの広さと、民間企業のイニシアティブによる効率性の向上とをどのようにバランスよく利用するかにある。そのため、個人のライフコースの進展に応じてどのような生活ニーズがあり、それを公的な部門と民間部門とによってどのように供給されているのか現状分析を行った。それをもとに民間企業によるサービス提供の可能性を企業十数社についてそのサービス提供の可能性を検討した。。 それに加えて、労働市場における選択肢の多様化とそれに伴うリスク対応のため、雇用のミスマッチ解消とセーフティーネットの構築に関しての検討を行った。その中間的な成果は、「雇用政策のヴィジョン検討委員会」等において報告し議論を重ねた。 また、景気後退が企業の経営戦略にどのような影響を与え、それが賃金制度の変更によって企業を通じた所得配分制度がどのように変わるのかを、各企業に対して実施したアンケート調査をもとに検討し、その中間的な成果は「賃金制度研究会」において報告した。 さらに、個人・カップル・家族が、選択肢の多様化を通じて豊かさを実現するために、何が必要かについて、2001年3月にフランスでワークショップを開催した。
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