戦後西ドイツの経済政策の選択肢の起源とその展開に関する研究計画の最終年度にあたって、第一に、次の2点に関する研究を実施した。1)戦後西ドイツの経済政策思想の骨格となる新自由主義の生成過程において、1930年代初期の大恐慌期における経済的自由主義の革新、その「第三の道」への転換に注目し、その内容を、ミュラー・アルマック、オイケン、とりわけリュストウの社会政策学会での発言(ドイツにおけるネオ・リベラリズムの最初の宣言)やライヒ経済省への提出文書に即して明らかにした。2)戦後から現代への展開の局面では、ヨーロッパ統合とグローバリゼーションの文脈の中で、社会史的統合の視点が有する政策的意義に注目した上で、欧州統合過程においても経済政策の選択肢の問題が、ポジティヴな統合とネガティヴな統合という形で現出することを明らかにした。そしてグローバリゼーションへの欧州的で革新的な対応の仕方を示したラフォンテーヌの構想の意義を析出した。第二に、本研究計画の総括として、報告書においてこの間の研究成果を次のような構成で体系化し、次の計画である著書出版に向けた最初のステップとした。1)1920年代ドイツにおける経済政策思想の革新、2)1930年代における自由主義経済政策思想の革新、3)1930年代ドイツにおける「リベラルな国家干渉」論の展開、4)戦後からEU統合へ--ドイツ社会史の視点から見た欧州統合、6)グローバリゼーションの衝撃とドイツにおける選択肢。
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