杉原は、2000年6月にボストンで開催されたWorld History Associationの年次大会と8月にオスロで開かれた国際歴史学会議で、成果を報告した。また、夏にロンドン大学で、所得分布の専門家や、アジア経済論を専攻する関連研究者と議論し、"The East Asian Path of Economic Development:A Long-term Perspective"と題するディスカッション・ペーパーを発表した。オスロでの報告は別途に刊行される予定である。さらに、日本語で世界の所得格差について啓蒙的な文章を書き、研究成果の還元を図った(11.研究発表参照)。今後は、池本論文(後述)の成果にもとづき、さらに詳しい歴史解釈を試みるつもりである。 池本は、マディソン教授の関連データを入力し、1820-1990年におけるジニ係数の変化を計算し、歴史的趨勢をいくつかの時期にわけて考察した。ジニ係数、タイル指数の意味を議論する中で、どのようにして東アジアの高度成長が、域内の格差を一時的に拡大しつつも、結果的に世界の所得格差の縮小に貢献したかを、歴史的に明らかにしようとした。両名は密接な接触をもち、180年にわたる長期的な変化の意義と、戦後の急激な変化とを整合的に理解しようと努めた。池本の暫定稿は、成果報告書に収められる。この論文を改善して、公表するのが今後の課題である。
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