東アジアに展開した民間経済情報ネットワークの実態に迫るために、昨年度に引続き関係史料収集を行なった。各地の旧高商系大学付属図書館や公立図書館の郷土資料室などで当該地の商工会議所関係資料や地域産業・商品流通に関する資料収集で一定の成果があった。しかし、外務省外交史料館や防衛庁防衛研究所図書館などの本格的調査には着手できず、この点は次年度に着手したい。 また、本年度はマイクロフィルム版『本邦商業会議所資料』を利用し、全国各地の商業会議所の月報類記載記事の分析とデータ処理の作業に着手した。地域により月報類の残存時期が異なるため、その検討方法に工夫が必要と思われるが、商業会議所の情報活動は地域性や地域産業編成に影響を受けたものであった、という見通しは得られた。 さらに、本年度は地方の商業会議所の活動ケースとして取り上げるため、川越商工会議所所蔵資料の調査と資料目録の作成を行った。川越商業会議所の月報類はマイクロフィルム版『本邦商業会議所資料』に未収の資料であり、さらに、その所蔵資料群は有益な1次資料であることを確認した。同資料には埼玉県商品陳列所をはじめ関連する諸機関の文書も含まれ、次年度はその分析も行う予定である。 本年度は最終年度に当るため、これまで収集した諸資料を分析し、整理することを中心に研究を進める。そして、民間経済情報ネットワークがいかに地域経済の発展や再編に影響を与えていたかを、データに基づいて明らかにする。
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