本研究は、日本の組立加工型産業において生産方式がどのような過程を経て生み出されてきたのかを、工場レベルでの資料を基にして実証的に明らかにしようとするものである。この目的を達成するために、本年度はまずこの産業に属する企業の社史や新聞・雑誌記事等から生産方式の生成に関係する資料の発掘を行い、かなりの文献情報を収集した。それと同時に、直接関係企業を訪問して、各々の工場の生産方式について実見調査するとともに、関係者から聞き取りを行った。本年度、行った企業調査の内、とりわけ大きな成果をあげたのは三菱自動車水島製作所への実地調査であった。同所は本来三菱重工業の航空機製作工場として建設されたが、戦後、自動車の生産工場に転換され、後、三菱重工業から自動車部門が分離されて三菱自動車が設立されると、同社の中心的な工場となった。こうした歴史を持つ同製作所では、現在においても生産方式の随所に、日本的生産方式の代表ともいわれるトヨタ生産方式とは異なった原理や方式が採用されていることがみられた。これらの水島製作所でみられる生産方式の特徴点がどのようにして生じたのかは、極めて興味深い問題である。同所の工場立地のあり方がそれを規定しているのか、さらに三菱重工業という造船から出発した企業の独自的性格によるものなのか、それらを明らかにすることは今後の重要な研究課題として認識された。そこで、次年度は、こうした問題関心を中心にして、さらに分析対象を広げて行く予定である。
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