本研究は、日本の組立加工型産業において生産方式がどのような過程を経て生み出されてきたのかを、工場レベルでの資料を基にして実証的に明らかにしようとするものである。本年度は、最終年度であるので、既収集資料の整理分析を行いつつ、研究のとりまとめを行った。ただ、その過程で、いくつかの資料を補充する必要があったので、戦中・戦後期における中京地区の機械工業についての新聞記事の追加収集を行い、また、造船業における生産管理方式の変遷を追うために、日本鋼管津製作所に赴き、聞き取り調査を実施した。この聞き取り調査では、造船業界では昭和30年代に既にトヨタ生産方式で著名な後工程引取の発想で生産システムの構築を目指した企業がいくつかあったという非常に興味深い知見を得た。この聞き取り調査は、研究末期に行ったために、既にとりまとめを行っている最終報告にどれほど取り込めるかは難しいが、今後の成果発表には十分活用できると考えられる。 なお、本研究の成果の一部である造船業における戦中戦後の生産技術については、本年秋にトロントで開催されるThe Socicty for the History of Technology (SHOT)の"Global Shipbuilding in War and Reconstruction"において研究代表者である柴と研究分担者である和田によって報告が行われる予定である。
|