1.「外為市場における取引量と価格変動率のミクロ構造モデル」の枠組み完成:モデル作成上の問題点を以下項目3で述べるような方法により克服、枠組みを完成できた。 2.外為マーケットメーカーのBid/Askのスプレッドの決定モデルの作成:上記1のモデルの方法をマーケットメーカーの行動分析に応用した。成果を2000年4月に米国Midwest Finance Association大会で発表予定。 3.モデル改善点の概要:上記のモデルは外為市場の外部から到着する売り買いの偏りを吸収するのにどれだけの相場の変化が必要かを対象とするものである。モデルから導かれる結論の一つは、為替ディーラーの相場予想が非同質的であるほど、所与の超過需要が引起こす相場の変動は大きくなるというものである。しかしこの正の相関関係を、為替ディーラーの予想のばらつきを表わす分布関数の分散と取引数量の間の比較静学として表わすことは容易では無い。困難さの理由は分布関数の逆関数は一般に存在しないかあるいは非常に複雑な形をしていることである。この問題は次のように2つの段階に分割して分析することにより解決できた。(1)各人の予想の相対的な位置は、0から1の区間に定義される一様分布に従う確率変数であることに着目する。すると所与の偏りを吸収するだけの相場はベータ分布に従うことになる。この結果は相場予想の分布関数の形には依存しない。(2)次に予想の分布関数は、一般によく用いられるものの中から選択するのではなく、逆関数が簡単な形をしているものから特定するのである。結果として求める相場は逆関数を関数、ベータ分布する確率変数を変数とする関数値として表現され、パラメーター間の比較静学が可能となる。
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