研究概要 |
平成11年度は、NPM論の学際的な位置づけとその有効性についてとりまとめた。 伝統的行政管理システムを支えたのは、「官僚制論(M.Weber)」と「政治と行政の二分論(W.Wilson)」である。このような考え方は、福祉国家の確立・混合経済体制のもとで「非現実性」あるいは「非効率性」が問題となり、これにかわるシステムの確立が求められた。変革しつつあったマネジメント理論との対比で行政運営の新たなパラダイムの構築が模索された。 伝統的な政策科学は、限られた資源配分をより効果的なものとするために攻策の立案・決定に関わる意思決定プロセスの合理化を重視し、「費用・便益分析」をベ-スとした純便益の定量化を志向した。しかし、米国の,PPBSなどの伝統的な政策科学の意思も決定プロセスへの適用は失敗と挫折の歴史であった。一見客観的と思える純便益の定量化は、議会・国民あるいは住民とのコミュニケーションの道具としてはほとんど寄与しなかったのである。 このような伝統的な政策科学の挫折とは対照的に、1980年前後から自治体、そして州政府における異なるNPM論による改革が道められ、着実な成果をあげていた。NPMの立場は,「意思決定プロセス」への有効性という観点から「経営学」の理念・手法を大胆に導入する。住民の属性をまず行政サービスの「顧客」ととらえ,行政の責務をなによりもまず「顧客」のニ一ズを反映した行政運営を行うことに置く。そのための道具として経営学の手法を活かし「住民のニーズ」を直接意思も決定プロセスに反映させることを考える。政策の効果は,業績/成果を図る見やすい指標を活用することでデー夕の推移によって議会・住民から容易に監視しうるシステムづくりを行い、これによりつぎの企画や予算編成に有機的に反映しうるとみる。つまり,議会や住民とのコミュニケーションを前提とした開放型のシステム運営がNPMの本質なのである。
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