平成12年度は、「ニュー・パブリックマネジメント(NPM)」論の適用モデルの基本的なフレームワークを構築した。 NPM論の本質は、アリソン(1982)のいう「マネジメント」の適用にある。「マネジメント」とは、(1)戦略、(2)内部管理、(3)外部マネジメントの三つの要素を組織運営に活かしていくことであり、「マネジメント」をもっとも有効に組織運営を行う一つの雛型が「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)」を公共部門へ適用したNPMである。 NPMを「マネジメント」の側面からのシステム設計を米国州政府の先進事例からみると、おおむね「オレゴン型」と「テキサス型」に類別できる。「オレゴン型」の特徴は「外部マネジメント」を基本としたシステム設計にあり、住民・NPOとのパートナーシップを重視する。州政府全体のビジョンをもとにした基本政策レベルの目標と具体的な数値目標の設定を行う。数値目標には各政策領域を代表する社会指標を選択し、「ベンチマーク」を掲げることで、これと現状との対比で目標の達成状況を対外的に示す。「ベンチマーク」の策定は、住民・NPO・経済界との協働作業により、政府とのビジョンの共有を図るとともにアカウンタビリティをも分担する。「テキサス型」の特徴は、「内部管理」を基本としたシステム設計にあり、部局単位ビジョンの策定をもとにした業績測定(Performance Measurement)を重視する。その本質は、部局の戦略計画に示された業績目標と予算をリンク(計画・予算・業績のリンケージ)させることによる「業務管理」にある。 二つの類型は、「戦略」をどのレベルで策定するのかという「マネジメント」のシステム設計からみた理念の相違による。現在では、両者は収斂する方向で改革が進められているが、二つの理念は、現在の日本のNPM改革にはきわめて有用な示唆となる。
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