NPM論は、学説的には伝統的な政策科学と公共政策分野における「評価論」を継承しており、単なろ「ビジネス・モデル」の公共部門への適用にとどまるものではない。しかしながら、「ピジネス・モデル」の適用そのものが、公共部門のシステム改革に革命をもたらした。第一の政策科学との関連では、PPBSの核心にあった「経済的な合理性」が意思決定プロセスで必ずしも有効に機能しなかったことから、便益の厳密な定量化による集計値の測定をなかば放棄し、価値観そのものをわかりやすい尺度により明示することで政治プロセスにおける選択の途を模索する「政治的な合理性」を意思決定プロセスの核心に置く。同時に、公共部門の内部管理でも戦略経営プロセス確保することで、ビジョンと政策目標の共有を図り「目標管理(Management by objectives)」の組織内部への動機づけをも意図する。第二の「評価論」との関連では、「評価」そのものを「科学的評価論」の厳密性・客観性の呪縛から開放した「参加型評価」のフレームワークが重視されるようになる。「実用的評価論」の台頭は、評価の視点からの「パフォーマンス・メジャーメント」の活用の途を開いた。 NPM論の核心は「目標管理型システム」の導入にあり、「目標管理」とは、「ビジョン・目標」を実現するためのシステムである。NPMを主導した諸国では、「ビジョン・政策目標」は、本来「政治」がその役割を担ってきた。いわゆる「政治主導」の仕組みである。しかしながら、多くの諸国・政府では必ずしも「政治主導」の仕組みは十分機能していない。これは第一に、二大政党制をとる諸国においても対立する政党間での政策・政権ビジョンの相違が不明確となり、政治プロセスでビジョンや戦略を問うことが不十分となったこと、第二に、「政府の失敗」「市場の失敗」によりNPOなどを核としたあらたなかたちでの参加の枠組みを確保することが先進諸国でも必要とされるようになったことによる。このような「政治主導」の機能不全や「政府の失敗」により、昨今のNPM論は参画・協働を前提としたシステムヘと進化を遂げている。「顧客」「ステイクホルダー」「所有者(主権者)」としての住民の属性ごとの参画・協働の枠組みを活用する新たなガバナンス・マネジメント・システムが現在構築されようとしているのである。
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