本研究は、市場経済においてその失敗の補正・補完を目的とする種々の政策決定に関し、政府がどのように行動しまたどのような制度が設けられているかが経済のあり方にどのような影響を持つかを、投票理論、社会的厚生関数・社会的選択論、公共選択論、組織論および近年ゲーム理論を応用する形で展開されている比較制度論等を展望、考察し、政策・公共的意思決定のあり方とその影響をより深く検討・解明することを目的としている。 本年はこれを、公共財の私的供給理論とともに、社会的意思決定における多数決理論、および公共的選択理論を中心に、その性質、特徴等の解明をさらに進めた。公共財の私的供給論については、均衡と所得分配の関係、均衡の非効率性を明らかにした。第2に、社会的意思決定の主要な方法である多数決制について、選択対象について経済的事象と同様に連続、凸、単調性を満たす選好を考えると、任意の個人間で対象の相対的評価がその順序を変えるほど大きく変化しない場合に、多数決制が整合的(consistent)な社会的意思決定をもたらすことを明らかにした。最後に公共選択論については、政府の政策および制度選択等の意思決定の観点から従来の議論を広く展望し、公共選択論が社会的厚生関数・社会的選択理論とどのように整合的に理解されるか、政府行動を理解するうえで両者がどのように補完しあうか、等について検討を進めた。このうち公共選択論と社会的厚生関数・社会的選択理論の構造的な相関および相違については、次の論文として纏める予定である。
|