研究課題/領域番号 |
11630097
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤田 誠一 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40135778)
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研究分担者 |
高浜 光信 明治大学, 商学部, 助教授 (70287879)
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キーワード | ユーロ / 国際通貨 / 為替相場政策 / ユーロ圏 / 複数基軸通貨体制 / 最適通貨圏 / 非対称実物ショック / 域内分業 |
研究概要 |
藤田は、ユーロの国際通貨としての可能性とその特徴、さらに国際通貨制度論から見たユーロ登場の影響を中心に研究した。IMF体制下のドルの強さは、固定相場制を維持する義務から、ドルが基準・介入・準備通貨として機能したことに求められたが、フロート制移行後はそのような制度的な佐瀬がないにもかかわらず、「ドル本位制」は継続し、特に外国為替市場ではドルの独占状態であった。それは、金融の自由化と金融市場の統合の中で、外国為替取引が巨額になり、さらにアメリカの経常収支赤字の拡大とそのファイナンスの過程で、巨額の資本移動が発生したことを背景としている。ユーロの登場は、ドルと並ぶ投資通貨の登場を意味し、これまで国際資本がドルを中心に循環していた構造を大きく変化させる可能性を持っている。このことは、ドルを中心として形成されているドル化経済・ドル圏とならんで、将来的にはユーロ化経済・ユーロ圏が形成され、世界が2極体制に移行すること、その結果アメリカの経常収支赤字のファイナンスが困難になることを通じて、世界経済の安定化効果を持つと考えられる。これらの研究成果は、日本金融学会国際金融研究委員会で報告した。 高浜は、最適通貨圏の理論を再検討し、通貨同盟のメリットはインフレ抑制にあり、事前的なインフレ率の収敏は必要ないこと、高インフレ国ほど通貨同盟参加のメリットは大きく、低インフレ国にとっては通貨同盟形成に当たっては、他のメリットを根拠にせざるを得ないという点を示した。さらに、通貨同盟形成後は産業構造の乖離度に応じて各国の純損失が発生し、通貨圏の拡大によって域内貿易が分業化の方向に進む場合には、その損失は大きくなることを理論的に示した。
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