藤田は、ユーロの国際通貨としての可能性、ユーロが国際通貨体制に及ぼす効果を中心に研究を行った。導入直後のユーロは、マルクが持っていた多様性を基礎にした国際通貨制を喪失するが、「上から」および「下から」のルートで、国際通貨としての役割を拡大し、「ユーロ圏」が形成されるであろうこと、また、ドルとユーロという2極通貨体制は、両地域のビナインネグレクト政策と投機的な資本移動を通じて、為替相場を不安定化させる危険性を持つが、他方でドルからユーロへのシフトがアメリカに政策節度を課すことによって、国際通貨体制を安定化させる可能性があること、などが主たる結論である。 高浜は、ユーロ導入後のユーロ地域内経済の安定化を、最適通貨圏の理論を再検討することを通じて検討した。通貨同盟のメリットはインフレ抑制にあり、事前的なインフレ率の収斂は必要ではなく、高インフレ国ほどメリットは大きく、低インフレ国にとっては通貨同盟形成について他のメリットを根拠にせざるを得ない。また、通貨同盟形成後は、産業構造の乖離度に応じて各国の純損失が発生し、通貨圏の拡大によって域内貿易が分業化の方向に進む場合には、その損失は大きくなるという点を理論的に明らかにした。 また、岩田健治助教授(九州大学)を代表者とする基盤研究にも分担者として参加していることから、頻繁に共同研究会を持ち、研究成果を『ユーロとEUの金融市場』および、『ユーロと国際通貨体制』として出版予定である。藤田は、ドル本位制における国際資金循環がユーロの登場でどう変化するか、高浜は通貨同盟のコスト・ベネフィット分析とECBの為替相場政策を研究した。
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