Lazear and Michael(1988)は、アメリカのConsumer Expenditure Survey(CES)のミクロデータを用いて、家計全体で得られた所得が家計内でどのように配分されているのかを研究した。そこでは、家計のさまざまな属性が支出形態にどのような影響を及ぼしているかが問題とされた。具体的には、子供がいない家計、子供の数が1人の家計、2人の家計、というように子供の数がふえていくにつれて、食費、住宅費、衣料費などの消費支出のシェアがどのように変化していくのかを分析した。本研究では、『パネル・データ』を利用し、(1)さまざまな家族属性(夫と妻の最終学歴、年齢、夫と妻の就業状況に関するダミー変数、子供の性別、子供の年齢など)と家計内配分(夫、妻、子供、それに共通経費)に関する記述統計分析を行い、ついで、(2)回帰分析により、統計的な解析を行った。 本研究によれば、全消費支出に占める子供に対する支出(一人っ子の場合)のシェアは、妻の学歴が高くなるほど、妻がフルタイムやパートタイムで働くほど、高くなることが観察される。また、アメリカでの研究結果と違って、子供の性別や子供の年齢は子供の消費支出のシェアに影響しないとの実証結果が得られた。 また、本研究では、総務庁統計局編『家計調査年報』からコーホート・データを作成し、それを使って1990年代の消費の低迷の分析を行った。それによれば、1990年代に入って、若い世代の貯蓄率が上昇していること、中年世代の貯蓄率が横這いを保っていること、高齢世代の貯蓄率の低下のスピードが従来と比べて下がっていることがわかった。こうした事実はライフサイクル仮説で基本的に説明可能であると考えられる。
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