本年は中国税制の移転メカニズムについて、天津財形大学、南開大学に赴き資料収集を実施した。原文のため昨年、一昨年同様に研究が進みにくく悪戦苦闘している。本研究には、税制史の研究が基礎に必要となる。そこで本年は中国税制史の翻訳を中心に行った。 1949年に中華人民共和国が成立した。しかし税制度は革命を根拠に独自に制定されていたものと、新解放区に暫時的に施行されていた税制が混じり二種類の税法は統一されていなかった。そこで1950年に、全国税制実施要則を発布した14個の税種を全国で統一規定し新しい社会主義税制制度が確立された。1958年には税制の簡素化の方針を貫くため、工商統一税が試行された。同時に農業税も統一された。1973年には、税種の合併、徴税方法の簡素化、不合理な税制制度の改革という指導思想にもとづき全面的に改正が行われた。1978年の党の十一回三中全国人民大会が開かれ、国外に向かって開放、国内の経済活性化を進めるという指導のもと経済改革が進められた。外資導入政策として対外開放政策を実施したのである。しかし1979年までの中国の税制のうち企業所得税は国有・国営企業を中心とした制度であった。 1994年に個人所得税と流通税に大幅な改正がなされた。税制の一本化を目指し、中国企業に適用していた各種企業所得税(国有企業所得税、国有企業調整税等)を企業所得税として一体化し、個人所得税についても、外国人に適用していた個人所得税と、中国人個人に適用していた収入調整税工商業者所得税を個人所得税と一体化した。また外資投資企業に対しても多くの優遇措置が設けられた。この1994年の税制改革は、社会主義市場経済体制の確立と改善に重大な役割を果たした。中国の税制の多くは中国独自のものも多いが、咋今の所得税の計算そののものには欧米の計算方法がハイブリッド化され規定が創設されていると考える。
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