本研究は東芝と日立の対米輸出マーケティングの特徴を解明することを目的とした。まず、東芝の対米輸出マーケティングに関しては次のことが明らかになった。東芝は日本の家電産業の中ではソニーや松下電器、三洋電機に比べて、アメリカ市場への参入は、後発社であった。先発社であるソニーや松下電器に早期にキャッチアップするために、PB(private brand)やOEM(original epuipment manufacturing)による間接輸出マーケティングを優先する戦略を採用した。ソニーや松下電器がアメリカ市場への参入当初から自社ブランドによる直接輸出マーケティングを採用したのとは対照的である。間接輸出マーケティングは大量注文によるコスト優位の戦略であり、直接輸出マーケティングはブランドや製品差別化を優先する戦略であるが、東芝の場合は、流通チャネルの構築がスムーズに進まなかったため、1980年代末までPBやOEMによる輸出マーケティングを続けなければならなかった。 日立の対米輸出マーケティングに関しては、聞き取り調査とアメリカの家電業界紙であるHFDやElectronics Merchandising Week誌、TV Digest、TWICEなどから日立の対米輸出マーケティングに関する記事を丹念に探索し、コンピューターにデーター入力した。入力したデーターをベースに、完全原稿にまでは至らなかったが、草稿として仕上げ、京都大学-ソウル大学の共同セミナー(京都大学経済学会主催、ソウル大学校経営大学・同経済学部共催、1999年12月18・19日、京大会館)において、「民生用電子機器産業の対米輸出マーケティング」というテーマで研究報告した。
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