研究概要 |
保険制度の文化史的背景を検討するため,各構成員がドイツ・イタリア・韓国・台湾・中国に出向くと共に,保険制度が本来的に「神の領域」である不確実性からの保障機能の「世俗化」であったとの仮説を検証した。また同様の見地からルネサンス期以降の都市の「社会保障政策」も,「愛」にもとづく宗教的拠出がその役割を失い世俗化するプロセスで発生していくとの仮説も検討した。さらに当時のカソリック教義がそのような社会連帯の「聖」から「俗」への転化にある種の機能を果していたかに関して究明する必要があるかについて討議した。けだし,保険が社会的連帯を所与とする「互酬」に類似しながら実はそれと対極の存在であるとの認識から「社会保障」も多分に宗教的相互連帯に似て,社会内「棄民」としての性格をもっていたとの仮説が展望されるからである。要するに,本研究は,これらを検証することをつうじて「絶望的覚醒」と「ニュートラルで無機質的技術としての統計学」との融合として近代保険を措定してものである。
|