研究概要 |
本研究の課題は,わが国をはじめとした各国で行われている公的供給をも含めたいわば鉄道産業に対する公的規制政策の再構築に焦点を当て,その実態と政策体系をより深いレベルで考察することにある。そもそも鉄道サービスの供給において「民」の役割をより重要視するような形での改革は世界的にも交通政策分野の重要なトレンドとなっているが,各国で実施に移されたないし検討されている諸改革の長所・短所,適合条件といった点に関する研究蓄積はまったく不足しているのが現状である。本分野の改革としては先駆者存在であるわが国のケースを中心に,民営化,上下分離,水平分割といった鍵言葉に注目して追求する本研究は,このような問題に正面から取り組むもので,その成果は広く交通政策の議論に大きく貢献することが期待される。 平成11年度の研究実績としては,水谷が日本における鉄道改革についてまとめた論文を9月にハノイ(ベトナム)で行われたRegional Conference on Railway Reform and Restructuringにおいて,発表を行ったことが,まず挙げられよう。会議で海外の研究者と議論を積み重ねることができたのは幸運であった。水谷はさらに11月にはボストンに出張し,欧米の現況について意見交換をさらに重ねた。両名とも文献サーベイにも努めたが,正司はその成果の一部を交通政策分野で公的介入が是認されてきたかに関する議論を整理・展望した論文「公共交通サービス供給への公的介入について」としてまとめ,これを所収した国民経済雑誌(第181巻第4号)は平成12年4月に公刊される予定である。 引き続き,平成12年度は当初の研究計画に沿った形で研究を進めながら,しかしその進展に応じて,必要な修正も併せて施しながら,初期の目的を達成する所存である。
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