研究概要 |
日本の流通システムの情報化は,EDI(電子データ交換)やPOS(販売時点情報管理システム)などの情報ネットワーク技術によって進展してきたが,最近のインターネットの急速な普及は「電子市場」の動きを加速している。EDIは企業間を専用回線で接続し,受発注のデータ交換を主とした「1対1」の接続形態を基本としてきたが,インターネットは不特定多数の企業間を結び,より豊富なデータ交換を可能とするため,電子,家電,自動車メーカーなどが「1対n」の接続形態で部材調達の完全電子化に乗り出している。さらに,インターネット上で複数の売手と複数の買手を結びつけ「n対n」の接続形態で企業間取引を電子的に処理する「インターネット取引所」の開設が進み,複数の電子市場を接続する「M to M」(market to market)によって複数の市場をまたぐネット上で取引が広がりつつある。 本研究では,情報技術革新に起因する日本の流通チャネル構造の変革について,実態調査と理論分析の両方を実施した.実態調査としては,(1)サプライチェーン・マネジメントによる流通チャネル構造の変化と,(2)電子市場の進展を研究課題として,流通関係機関からのヒアリングと資料収集を行うとともに,調査結果を大蔵省財政金融研究所の研究会において発表した.また,理論分析としては,(3)流通チャネル構造の変革に関するモデル分析,(4)流通チャネルの垂直統合に関するゲーム論的分析,(5)企業間の水平的な競合関係の統合と分割,および垂直的な補完関係の統合と分離に関する市場構造の分析を実施しており,この部分については,2000年9月の日本経済学会全国大会で発表するとともに,数本の論文を公刊した.
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