サービス消費では、顧客もデリバリー・プロセスに参加し、他の参加者と協働しなければならない。参加と協働における顧客の行動は彼がデリバリー・プロセスに関して保有するスクリプトに基づくことから、顧客が他の参加者の保有するスクリプトと共通性の高いものを保有しているかどうかが、顧客満足に重大な影響を及ぼすと考えらる。スクリプトにはこの台本機能以外に、評価基準機能と予測向上機能があり、これらが適切に働くことも顧客満足にポジティブな影響を及ぼすと考えられる。顧客満足の形成におけるこのようなスクリプトの機能を理論的・実証的に考察を行った。 実証的考察では、医療サービスとレストラン・サービスにおいて顧客満足調査を実施した。具体的には、医療サービスにおいて利用が進んでいるクリティカルパスが明示的スクリプトとして機能すると考えられることから、この利用の有無が入院患者の満足や評価に及ぼす影響を明らかにするための質的・量的調査を実施した。レストラン・サービスについては、利用者にスクリプトにかかわる情報を事前に提示した場合としない場合で、利用者の満足や評価がどのように異なるのかを明らかにするための量的調査を実施した。 その結果、デリバリーの参加者間でのスクリプトの共有は外部顧客の満足にポジティブな影響を及ぼすことが明らかになったが、その影響度は期待したほど大きなものではなかった。そして、スクリプトは外部顧客満足に直接的に影響を及ぼすのか、それとも他の要因を通じて間接的に影響を及ぼすのか、については今後の研究課題として残された。また、スクリプトやそれにかかわる情報をサービス・デリバリー前に提示することは外部顧客の満足構造を変化させることや、提示内容によっては外部顧客満足にネガティブな影響を及ぼす可能性があることも明らかになった。
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