法人対応マーケティングにおいて、営業部隊がいかに顧客適応的な組織を構築し、関係志向的な戦略を実践しているかについて調査研究を行った。平成12年度はとりわけITベンダー業界を調査対象として選択し、競合関係にあるNECと日本IBMのCRM(Customer Relationship Management)戦略における営業戦略の位置付けについて、管理職レベルの担当者にインタビュー調査を行い、リレーションシップ・マーケティングの視点から比較分析を行った。さらにCRMアウトソーサーであるトランス・コスモス社にも併せて業界動向とCRMについてのインタビュー調査を実施した。 CRMとは、顧客データベース構築に基づき、大容量のデータをマイニングすることにより顧客の購買パターン等の法則性を導きだし、併売などの提案的な営業・マーケティングを行い、優良顧客を育成していく手法である。顧客データがコールセンターやインターネット等のインターフェースを通じて直接的に売り手企業に入手可能になることは、営業機能に対して変化をもたらす。NECと日本IBMは、ともにITベンダー業界においてソリューションビジネスを展開しているが、前者は、顧客志向的な営業組織を形成し、情報技術の援用を得て、顧客に提案型営業を発展させていく上で、営業ナレッジをデータベース化していくことに注力しているのに対し、後者は、むしろ情報収集や提案といた営業機能を営業担当者に担わせず、販売機会を見つけ出した者(技術職など)を中心にプロジェクト体制を取らせていることが発見された。すなわちCRM推進の営業への影響において、営業強化と営業代替性という2つの相反する戦略が見られた
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