研究概要 |
平成11年度、12年度の研究により、創造的技術者のパーソナリティを理解する手法として交流分析(Transaction Analysis, TA)が有用であることがわかった。"交流分析"の「自我状態モデル」(PACモデル)によると創造的技術者は優勢な「子供」の自我状態が重要であった。また創造的な営みには、演繹的、帰納的推論の他に、アブダクションの3つの論理が用いられ、特に発見や発明の発端はその個人によるアブダクションが重要であることがわかった。この3つの推論はその要素である仮説・事例・結果の3つで互いに関連づけられる(DIAモデル)。 今年度は、論理の形式と自我状態との関係を考察し、技術開発における「創造のプロセス」を考察した。その結果、その人の得意とする論理の形式と優勢な自我状態とは密接に関連していて、演繹的推論と「親」、帰納的推論と「大人」、アブダクションと「子供」の自我状態との関連があることを見いだした。一方、「創造のプロセス」は次の3つのステップから構成される。 ・第1ステップ:アブダクションによる仮説の形成 ・第2ステップ:演繹的推論による仮説の一般化 ・第3ステップ:帰納的推論による仮説の検証 技術開発の現場は「創造のプロセス」を遂行する二つの「場」から成る。発明とか発見の「創造の場」と、革新的な技術および他の一般的技術を適用する「商品化の場」である。2つの「場」ではイノベーションの定義およびパラダイムが異なり、結果として技術マネジメントが明らかに異なる。技術者の論理とパーソナリティを理解した上で、「場」に応じた技術開発マネジメントが極めて重要であることを見いだした。 さらに「創造のプロセス」をより一般化し理解しやすくするために、「年を取るとアッという間に一年が過ぎる」との普遍的な現象の具体的な時間の長さを求める仮説形成プロセスを取り上げ、シミュレーションを行った。
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