<技術イノベーションに及ぼす人の資質と組織に関する研究> 技術革新の発端には特定できる個人がいる。独創的な個人は技術の創造に際して、どのような論理を用いているのだろうか、またどのようなパーソナリティの持ち主なのか。それを技術開発マネジメントにどのように生かしたらよいのであろうか。本研究は従来の技術開発マネジメントに欠けていた新たな視点を提供する。 1)創造的な営みには、演繹的、帰納的推論の他に、アブダクションの3つの論理が用いられる。特に発見や発明の発端はその個人によるアブダクションが重要である。3つの推論は推論の要素である仮説・事例・結果の3つで互いに関連づけられる(DIAモデル)。 2)"交流分析"の「自我状態モデル」(PACモデル)により創造的技術者のパーソナリティを理解する。特に創造的技術者は優勢な「子供」の自我状態が重要である。またその人の得意とする論理の形式と優勢な自我状態とは密接に関連している。すなわち演繹的推論と「親」、帰納的推論と「大人」、アブダクションと「子供」の自我状態との関連である。 3)創造のプロセス」は次の3つのステップよりなる。 ・第1ステップ:アブダクションによる仮説の形成 ・第2ステップ:演繹的推論による仮説の一般化 ・第3ステップ:帰納的推論による仮説の検証 4)技術開発の現場は「創造のプロセス」を遂行する二つの「場」から成る。発明とか発見の「創造の場」と、革新的な技術および他の一般的技術を適用する「商品化の場」である。2つの「場」ではイノベーションの定義およびパラダイムが異なり、結果として技術マネジメントが明らかに異なる技術者の論理とパーソナリティを理解した上で、「場」に応じた技術開発マネジメントが極めて重要であることを強調する。 5)「創造のプロセス」をより一般化し理解しやすくするために、「年を取るとアッという間に一年が過ぎる」との普遍的な現象の具体的な時間の長さを求める仮説形成プロセスを取り上げ、シミュレーションを行った。
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