本研究はこれからのコーポレート・ガバナンスについて展望を試みるとともに、それを基礎に日本型コーポレート・ガバナンスの主張可能性について考察することを狙いとするが、本年度は前者に焦点を当てつつ文献研究を中心に検討を進めた。その結果、以下の成果を得た。 第1に、経営者の規律づけを問題とする形で今日、コーポレート・ガバナンスへの関心が諸方面で高まっていることの背景に、大規模株式会社企業の社会経済的ヘゲモニーの増大、経営者の裁量性の拡大、および企業と経営者の拘束への社会的関心の強まりが存在することを、Daggerその他の論者の見解のうちに確認した。 第2に、特定ステークホルダーを法的ガバナンス構造の枠内でとり上げる主流派論者の問題接近も、セルフ・ガバナンスを中心に問題を画一的に論じる、社会的責任論ないし「企業と社会」論の接近も不十分であること、また、技術論的経営学理論としてのコーポレート・ガバナンス理論の構築のためには、社会的責任論とコーポレート・ガバナンス論、権力と責任、自律性と他律性、効率と公正、発現と退出、アカウンタビリティ、等の切り口・視点からコーポレート・ガバナンス問題についての掘り下げを行う必要があることを明らかにした。 第3に、規制緩和という社会の今日的動向についてならびに社会的責任論の歴史的な展開動向について考察することで、コーポレート・ガバナンス問題の出現と今後に関して理解を深めた。 また、これらの成果の一端を、日本経営教育学会の第31回全国大会(平成11年6月東洋大学)および日本経営財務研究学会第23回全国大会(平成11年10月滋賀大学)で、夫々、統一論題報告の形で明らかにするとともに、共同執筆の著者、および雑誌論文として発表した。
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