本研究はコーポレート・ガバナンスの今後の展開について考察するとともに、その結果を踏まえて日本型コーポレート・ガバナンスの主張可能性に関して論議することを狙いとするが、平成13年度は以下の形で研究を進めた。 まず、本年度の前半ではつぎのことを検討し、成果を得た。すなわち、第1に、コーポレート・ガバナンス問題は企業はだれのものかという問題、及び経営者を公正と効率の2点からいかにコントロールするかという問題に関わるが、前者の考察のためには現代の企業の権力・影響力の増大への留意の必要性、ならびに企業とその経営に対するステークホルダー・アプローチの意義の認識の増大を確認すべきことを、改めて理解した。第2に、第1のことと関連するが、企業はだれのものかを巡っては多元的ステークホルダーの存在を念頭に置かねばならぬこと、また、経営者のコントロールについては取締役会改革への動きと企業評価団体の展開の傾向とに注意すべきことを明らかにした。第3に、従業員や取引先を重視するとともに、監督官庁、メインバンク、社長会、企業内組合、従業員持株会といったものによる経営者コントロールに依存してきたところの日本型コーポレート・ガバナンスが、多元的ステークホルダー重視の面ではガバナンスのグローバル・スタンダードたりうる一方、経営者コントロール面ではこれまでのパターンの大幅な修正を余儀なくされるであろうこと、しかしながら、グローバル・スタンダードはともかく、ローカル・スタンダードとしての日本型ガバナンスの存在の可能性は大いにありうることを理解した。以上の結果に関しては、その一端を学術誌及び日本経営学会統一論題報告で公表した。 つぎに、本年度の後半では、上記の研究成果、及び平成11〜12年度の研究成果に基づき、研究のとりまとめにあたるとともに、その結果を研究成果報告書にまとめた。
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