本研究は、現代の代表的企業である巨大株式会社企業を対象に、コーポレート・ガバナンスの今日的特色および基本的課題を明らかにするとともに、その結果を踏まえつつ我が国企業のこれからの方向、および日本型ガバナンスの展開可能性に関して基礎的考察を試みることを狙いとする。 本報告書の第1章では、コーポレート・ガバナンス問題の展開が今日の社会における規制緩和の社会的潮流と密接に関わっていることが論じられる。第2章では、コーポレート・ガバナンスにおける基本問題の1つとしての、だれのためのガバナンスかという問いに対する検討がなされる。コーポレート・ガバナンス問題の基本的領域、社会的責任論と企業権力、および、コーポレート・ヘゲモニーとコーポレート・ガバナンスについて考察がなされる。 第3章では、コーポレート・ガバナンスにおけるもう1つの基本問題である、どのようにして経営者を規律づけ、動機づけるのかという問題に関して、考察がなされる。現代の経営者職能について論じられたあと、ステークホルダー・アプローチに基づく企業経営技法が考察される。そして、経営者の規律づけとコーポレート・ガバナンスの問題が、経営者支配および取締役会改革に関連して論じられる。第4章では、日本的経営と日本型ガバナンスがとり上げられる。わが国における社会的責任課題と社会的責任研究についての動向、日本的経営とその国際的適用可能性、および日本型ガバナンスの可能性が述べられる。 最後に、第5章では、経営学研究とコーポレート・ガバナンス論について論じられる。経営学の方法、経営学の研究領域、および現代経営学研究とコーポレート・ガバナンス論について検討がなされている。
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