研究概要 |
第1年度の研究実績は、4つのケースとひとつの理論研究の形で結実している。 第1に、ホームオフィスが導入されることが、組織やチームのあり方にどのような変化を与え、それが、成員に必要なスキルや、ベテランの新人に対するコーチングにどのような影響を与えるかについて、製薬産業の企業でインテンシブなインタビュー調査を新人を対象に実施し、定性的データを分析した。その理論的意味合いを、社会化、個人と組織のマッチング、プロセス・コンサルテーションの観点から考察した。 第2に、別の企業(化粧品産業)において、ITの発達に対応するために創発的に生成された新しい形態の組織(具体的には、その会社のHPの立ち上げを推進する組織的母体)の参加者にエスノグラフィックなインタビューをおこない、情報技術と新たな組織形態との関連をめぐるエスノグラフィーを、ラショーモン法によって作成した。 第3に、船舶の中の専門職の研究を、専門家の育成という観点から、学校時代、就職後の両面から、スキル形成においた比較研究をおこなった。ITのインパクトはまだ顕在的には見られない領域を対象としたケースは、追加的な視点をこの研究に与えてくれる。 第4に、まだ報告をする段階にいたっていないが、社内ベンチャーと独立系企業者との間で、ITの利用やキャリアの形成がどのように異なるかについての生活史インタビュー,もおこなっている。 以上の4つは、実証的な研究であるが、さらに第5に、組織のなかの感情プロセスについての理論的研究もおこなった。情報技術の導入が組織を変革し、必要とされるスキルや、それを育むコーチングのやり方にも変化が生まれるときには、必ず成員に不安(や逆にうまく変化にのれるひとには楽しみ)を中心に感情面でのインパクトがあるので、組織論で感情の問題をどのように扱えばいいか、次年度の実証にむけて体系的なレビューをおこなった。
|