まず、行政の電子化に関する先行研究を把握するため内外の文献を収集し調査した。そして、電子自治体のモデルを作成するために、作業仮説を設定後、それをもとに日本では東京都、三重県、横須賀市、加古川市など、米国ではニューヨーク市、ロサンゼルス市、サニーウェル市、およびサクラメント郡などにおいて関係部門で観察および聞き取り調査を実施し、比較研究を行った。特筆すべき知見としては、今後体系的にまとめる予定であるが、つぎのようなことが挙げられる。(1)日米における経済状況、税制、自治体の仕組み、システム、制度の差異が両国のITの活用方法に大きく反映していること。(2)日本のように年功序列主義、長期雇用の人事システムと違い、米国では業績主義、人材の流動化が活発で、そのことがIT活用についてもダイナミズムをもたらしていること。(3)ニューヨーク市とサニーウェル市は、行政評価に長年の実績をもつが、今回新たにそれらとの統合を図ったIT戦略を立案したこと(日本では統合化はまだ見当たらない)。(4)サクラメント郡は、CIO(情報統括役員)が3年契約の社員であり、全米の自治体で初めてERPのSAP/3を導入し、活用していること(日本の自治体ではまだSAP/3の導入は見当たらない)。(5)米国の自治体が日本と比べて全て進んでいるわけではないこと(例 ロサンゼルス市)。(6)東京都など多くの日本の自治体では、米国自治体に比し、インターネットやイントラネットなど情報通信化で大きく立ち遅れたこと。 これらの他にも、種々の知見が得られたが、それらについては、平成12年度に予定されるアンケート調査による情報収集をも踏まえて、理論と方法論の構築に引き継がれる。
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