研究概要 |
企業組織における戦略的変革のメカニズムについて、既存の研究をベースに、戦略転換モデルと組織変革モデルの相互の関連を検討し、理論的研究を行った。戦略的変革は、組織変革の一つのパターンとして位置づけられ、主として、戦略内容の変化である戦略転換のレベルで議論が展開されてきた。その結果,戦略転換に関しては合理的モデル、学習モデル、認知モデル等に識別できるほど広く展開されるに至っている。しかし,そうしたモデルでは戦略転換と組織変革との関連が不明確であり,戦略的変革のモデルとしては有効性を欠いたものになっている。要は,変革の実現可能性が問題とされなければならないのである。このような戦略的変革の実現性に焦点をあてるとともに,変革の構想から実現に至る過程で生起するパラドックス現象にも焦点を当てているところに本研究の特色がある。企業の戦略的変革に伴うパラドックスの研究はほとんどなされていないのが実状である。競争優位性を確保するために必要な戦略的変革能力には、一方で過去の動向を反映したものであるとともに、他方、将来の動向を探るものである、というパラドックシカルな特性が内在しているといえる。本年度の研究では、とりわけ、戦略の性質から出てくる変革独自のパラドックス現象の生起メカニズムを明らかにすることによって、より効果的な戦略的変革を展開できる理論モデルの構築が志向された。その成果の一部は、共著による『戦略組織論の構想』(同文舘、1999年)で展開されているが、まだ不十分な点があり、次年度以降の研究において、さらに洗練された理論モデルの構築とその実証がなされる予定である。
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