研究概要 |
企業組織における戦略的変革について,前年度の研究成果をベースに,組織の進化モデルとの関連を検討し,理論的研究と実証的研究を行った。組織の進化モデルは,組織の環境適応をめぐる環境決定論と組織主体論の間で行われた論争に決着をつける一つの分析視角として登場してきたものといえる。しかし,分析レベルの設定や進化プロセスの捉え方において論者間で相違があり,多様な組織の進化論が展開されている。それを整理すると,従来の経験科学的分析の限界を強調して,個別組織の創造的進化を捉えるミクロ的な枠組みを模索しようとする流れと,環境の所与性を重視しながら経験科学的分析に馴染まないコセプトを排除しようとするマクロ的な組織エコロジーの流れに大別できる。このような組織の進化モデルの展開に対して,企業組織の戦略的変革がどうあるべきかを探るために,本年度の研究では進化的変革という新しいコンセプトを設定することにした。進化的変革とは,組織の進化ロジックを逸脱しない範囲で変革の可能性を探ることを意味している。したがって,企業組織の場合,その属する個体群(産業ないしマーケット)の進化プロセスに逸脱する変革行動をとれば失敗の道を歩む,ということを示唆するものである。その研究成果の一部は,論文「組織の進化的変革:その可能性と限界」(2001年)で理論的に展開されているが,その実証研究については,データ収集にまだ不十分な点があり,次年度の研究においてさらに検討を進め,研究テーマの総まとめをする予定である。
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