企業組織における戦略的変革モデルについて、過去2年間の研究成果を踏まえ、進化的変革の観点からその理論的精緻化と実証研究を行った。有効な戦略的変革モデルの構築は、進化のロジックを踏まえた上で、変革の構想からその実現に至るプロセスを前提に、そこで生起するパラドックス問題の解消を意図するものである。本研究の進化的変革というコンセプトは、グローバル化や情報ネットワーク化によって不透明感の増した現代社会における企業変革のあり方を問うものであり、組織のロジックを逸脱しない範囲で変革の可能性を探る組織行動を意味する。進化的変革は、戦略的変革の実践的有効性を実現するものだが、その実態は、いくつかのサンプリング調査で有用であることが明らかにされただけで、まだ十分に検証されたとはいい難い。進化的変革モデルによれば、企業組織は、その属する個体群の進化プロセスから逸脱する変革行動をとれば失敗の道を歩む、ということが示唆される。具体的にいえば、組織を取り巻く環境状況に応じて、組織のあり方が問われること、すなわち、環境の変化に対して、組織のコントロール(制御)と柔軟性(自由)のあり方を具体化する組織像がどのように適応進化していくかが基本的な論点となる。これまでの研究において判明した新たな知見は、コントロールと柔軟性の関係性から生ずるパラドックスが解消可能であり、それを実現する組織モデルが想定される点である。その研究成果の一部は、学会報告「戦略意的意図と組織の弾力性」(経営戦略学会、2001年12月)、論文「戦略的意図と競争優位性」(2002年3月)で公表されたが、実証研究の整理がまだ不十分であり、今後さらに、本研究の発展をさせていく予定である。
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