研究概要 |
本研究は、日本企業の人的資源管理(HRM)システムと公正性との関係を理論的・実証的に検討した。 1、概念モデルの設定と調査:本研究では、日本的なHRMシステムがハイ・インボルブメント(Lawler,1986)な特徴を持ち、それが「組織の公正」(Greenberg,1990)を高め、さらに企業業績を高める、というモデルを設定した。そして、モデルを検討するため、一次調査として東北地方の企業210社に対して郵送による質問紙調査を実施し、二次調査としてそのうちの35社の従業員946人を対象とする質問紙調査を実施した。 2、調査の結果:(1)伝統的なHRMポリシー(長期的雇用と内部化された技能形成、および技能形成に基づく評価)を持つ企業は他の企業よりもハイ・インボルブメントなHRMシステムをとっていなかった。(2)ハイ・インボルブメントなHRMシステムが従業員にとって参加主義的であると認知されることは明確に確認されなかった。(3)HRMシステムが参加主義的であると認知されれば、従業員の公正知覚が高まり、さらに職務満足感・仕事への動機づけ・組織コミットメントが高まる。そして、これらの従業員の職務態度が企業業績にポジティブな影響を及ぼす。 3、本研究の意義:本研究で設定されたモデルは完全には支持されなかった。しかし、HRMシステムが参加主義的であると認知されれば公正知覚をもたらす点は、日本という文化的・社会的文脈においても「組織の公正」アプローチが有効であることを示す。
|