介護保険が実施された競争環境下においては、高齢者ケア施設は利用者に選ばれるサービスを提供するためのビジネスシステム構築にしのぎを削らざるをえない。本年度の研究では、非営利組織である高齢者ケア施設のマネジメントを、(1)組織編成の観点から分析するとともに、(2)理論的かつ実践的な観点からリエンジニアリングの手法に基づいて分析した。調査は、老人保健施設、特別養護老人ホームを対象に行った。 (1)介護サービス組織の組織編成について 近年、介護サービス組織として、ユニット制が注目されている。ユニット制は、従来、介護福祉研究者によって介護の濃密さを実践する組織形態として論究されてきたが、介護保険制度下の介護現場においては個別処遇実践のためのサービス管理の側面にかなり注意が払われている。今後は、ユニット制の持つ二面性を視野に入れて組織編成を考察すべきである点が明らかとなった。本課題は『東北学院大学論集経済学』第145号において考察を加えた。 (2)介護サービス組織のリエンジニアリングについて 本年度は措置から契約へと社会福祉制度が移行した初年度であり、介護現場はかなり混乱した状況にあったため、リエンジニアリングに成功した施設はほとんど見られなかった。そのような中で、リエンジニアリングを試行錯誤していた施設の事例を分析し、介護サービスにおけるリエンジニアリングプロセスを考察した。その結果、介護サービスレベルの設定→介護職員の日課の見直し→勤務表の平準化→リザーブ職員の抽出→リザーブ職員への個別処遇の振り分け、のプロセスからリエンジニアリングが構成されていることが明らかとなった。本課題は、平成12年度老人福祉施設研究会議において報告したが、今後も継続して多様なプロトタイプの分析が必要である。
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