平成11年度は、施設運営の現状とその問題点を把握することに力点を置いて調査した。措置から契約へと社会福祉制度が変革されつつある過渡期であり、マネジメント上の課題として、(1)措置制度の下の経営が長期にわたっていたため、介護実践におけるコスト意識・独自性意識は極めて希薄であり、コストリーダーシップ・差別化戦略への移行は容易ではない。(2)介護サービスの質を向上させるために、従来から組織変革に手はつけられてきたが、必ずしも利用者志向である必要はなく、その多くは現場の抵抗のもと失敗している。(3)新卒未熟練介護者の比率が急激に高まっているため、介護サービスの質を維持することが困難になりつつある。の諸問題が明らかとなった。 平成12年度では、非営利組織である高齢者ケア施設のマネジメントを、(1)組織編成の観点から分析するとともに、(2)理論的かつ実践的な観点からリエンジニアリングの手法に基づいて分析した。 (1)介護サービス組織の組織編成について 近年、介護サービス組織として、ユニット制が注目されている。ユニット制は、従来、介護福祉研究者によって介護の濃密さを実践する組織形態として論究されてきたが、介護保険制度下の介護現場においては個別処遇実践のためのサービス管理の側面にかなり注意が払われている。今後は、ユニット制の持つ二面性を視野に入れて組織編成を考察すべきである点が明らかとなった。 (2)介護サービス組織のリエンジニアリングについて 本年度は措置から契約へと移行した初年度であり、介護現場はかなり混乱した状況にあったため、リエンジニアリングに成功した施設はほとんど見られなかった。そのような中で、リエンジニアリングを試行錯誤していた施設の事例を分析し、介護サービスにおけるリエンジニアリングプロセスを考察した。その結果、介護サービスレベルの設定→介護職員の日課の見直し→勤務表の平準化→リザーブ職員の抽出→リザーブ職員への個別処遇の振り分け、のプロセスからリエンジニアリングが構成されていることが明らかとなった。
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