研究概要 |
1.合意形成支援(開放性)システムの開発とその有効性の検証 合意形成を阻害する大きな要因のひとつである「開放性」について学習に心を開かせるためのゲーミング・シミュレーションを開発した.開放性には自分の意見や情報を率直に提供する参加型開放性と,自分の情報や意見が間違っていないかどうかを省みる内省型開放性があり,両者がそろわないと効果がない.このことは観念的には誰でも承知しているが,実際の行為が伴っていないケースが多く見られる.このような現実をシミュレートしたモデルを作り,これに基づいてエクササイズを作成した.参加者はエクササイズの中での自らの行為を客観的に観察することによって,espoused theoryとtheory-in-useとのギャップに気づき現実社会での行為を改めることを狙いとしている.プロトタイプの実施を通じて有効性が確認され,このシステムは,2002年4月から東京電力原子力発電所の約600人の中央制御室運転員を対象に定期研修の一環として実施されることになっている. 2.合意形成支援(地域共生)システムの開発 昨年度の研究で,東京電力柏崎刈羽発電所のインタビューやアンケート結果を分析した結果,東京電力側と地元住民との意識のずれが地域共生を妨げる大きな要因であることが明らかになった.これまでの会社側の「広報活動」が科学的根拠に基づく説得を中心にしているのに対して,地域住民は不信感や不満といった感性的側面を問題にしている. 問題の大半は会社側にあり,社員およびその家族全員一人一人が地域住民と個人レベルで相互理解を深める以外に根本的な解決策がないところから,この点を社員とその家族に疑似体験を通じて学習させるシステムのプロトタイプを作成した. 明年度,東京電力および日本原子力発電でテストランを行う予定である.
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