本年度は、科学研究費の補助金を得て前半に一編、後半に一編、合計二編の論文を執筆することができた。最初の一編は、「ビジネスモデルと経営戦略」と題するものであり、ビジネスモデルをビジネスモデル=経営戦略+価値連鎖・経営情報技術と規定した。このモデルは、経営情報技術によって価値連鎖を改革する企業が、経営理念や経営戦略によって導かれることを示している。 本年度の後半に書いた一編は、「アメリカの経営理念-GEの経営理念と新い価値観の創造-」という表題であり、GE Valueの性格、内容、オペレーティング・システムとの関係などについて論じたものである。特に、われわれの分析枠組みである、(1)経営理念の領域性、(2)経営理念の階層性、および(3)日米比較の仮説に基づいて、GE Valueの展開を試みた。これによると、GE Valueは、経営の存在についての理念や経営環境についての理念よりも、経営活動や経営管理活動の理念が多いこと、日本では、経営理念・ビジョン・経営計画・予算の連鎖があるに対して、GEでは、バリュー・ビジョン・アイデア・ストレッチという連鎖があることに気づく。また、GEにおいては、良い人材を企業に蓄えるために、企業業績の良いときであってもレイオフする。ウェルチの「人を切ったのではない。その職務を切ったために、それを担当していた者が辞めることになっただけだ」という言葉は、GEが人間主義でなく、職務主義であると規定することもでと日本企業との違いを示す。 さらにわれわれは、科学研究費の補助金を得て日本企業143杜から、経営理念、社会貢献憲章、および地球環境憲章を収集することができた。これらの資料は豊富な内容を含んでいるので、今後は、これらを分析して、さらに経営理念と経営システムの日米比較に関する研究を進めていきたい。
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