本研究では、経営学の分野の主流な研究アプローチのひとつとなっている事例企業を用いた実証研究をコンピュータ上でおこなうための基盤となるシステムの開発をおこなった。従来のシステムにおける問題点は、第1に開発されたシステムは特定企業のためのアドホックなシステムが多く汎用性が乏しいこと、第2にシステム開発にはスキルが要求されるためにスキルの乏しい研究者には利用されにくいということであった。 そこで本研究では、モデル統合アプローチを用いることにより、経営環境や企業モデルを構成する複数の部品に分解し、それらを再度組み合わせてひとつのシステムとして実現する方法をとり入れた。これにより多様性の高いシステムとして実現することができる。また、組み合わせる部品となるシステム(本研究では単位モデルと呼んでいる)はユーザの操作性を高めるために、記述モデルとシートモデルを利用できるようにした。記述モデルは変数間の関係を四則演算の記号を用いて表現するだけでモデルとして実現できるものである。一方のシートモデルは表計算システムとしては標準となっているExcelのシートを直接操作するものである。開発したシステムでは、これらの単位モデルの作成と単位モデルを組み合わせてひとつのシステム(本研究では複合モデルと呼んでいる)を作成する過程を支援する意思決定支援システムとして実現されている。また、モデルの操作性を高めるために、モデルの修正、追加、削除および複合モデルの修正(単位モデル間の結合関係の変更)を容易に行えるように工夫した。さらに、実証研究での使用可能性を検討するために、ビジネスゲームに着目し、コンピュータ上で企業モデルの構築をおこない、競争環境下で企業活動を時系列でシミュレーションをおこない財務諸表をベースに経営成果を分析する方法論を研究した。
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