現在の環境問題をめぐる分析は、経営者の地球環境に対する倫理的・道徳的態度の変更を迫ったり、企業の積極的環境戦略の重要性を指摘することにとどまっており、企業の環境戦略とグリーン・ステイクホルダーとの間の相互作用プロセスを分析するまでに至っていない。さらに多くの企業がとる環境戦略がまさに競争的状況になり、環境戦略の競争的優位性の質が変化してきつつある状況で、競争戦略と環境戦略の同時性を前提にして企業の環境戦略を議論すべき時期にきている。 こうした分析のためのパースペクティブとして、競争戦略として企業の環境戦略を捉えながら、そうした企業の競争的環境戦略とそれを評価し投資行動や購買行動さらには企業格付け行動に反映させようとするグリーン・ステイクホルダーとの間の組織間相互影響過程を理論化するという道が考えられる そのための予備研究として、これまでの組織環境論の発展過程のなかで新たに生じてきた視点と忘れられた視点とを確認する作業を行った。前者については、コンティンジェンシー理論の環境理解、環境選択論の環境理解、個体群生態学の環境理解、そして制度的アプローチの環境理解について文献レビューを行った。後者については、Emery=Trist(1965)の古典的論文で提示された因果テクスチャーという視点が、その後の組織環境論の発展のなかで忘れ去られていったことを確認した。 さらに実証研究として、CERESという環境コンソーシアムの10年間にわたる形成発展過程を分析することで、複数異種組織連合のマネジメントの変化を調査した。さらに10年間にICCRという宗教団体の株主行動(shareholder activism)を通じてセリーズ原則の署名に関係した米国企業を分析対象に、グリーン・ステイクホルダーと企業の環境戦略の相互関係について分析した。そして、企業の環境戦略上の差異を、政府-業界-グリーン・ステイクホルダー間の相互関係から生じる制度的フィールドとの関連で分析するという視点の重要性を指摘した。
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