平成12年度における研究実績の概要は以下の通りである。 1.前年度(平成11年度)の研究業績を踏まえ、企業規模間の経営業績格差と企業規模間平均賃金格差の関連を検証したうえで、企業規模間平均賃金格差の内実について、理論的・実証的考察を進めた。 2.企業規模間平均賃金格差の内実は、第1に企業規模別にみると第1次労働市場と第2次労働市場の各労働力構成比の相違とその変化、第2に第1次労働市場においても労働力の階層性がみられること等があげられる。 3.第1次労働市場における階層性は、企業規模別に(1)男女別構成比の相違と推移、(2)年齢別構成比の相違と推移、(3)勤続年数別構成比の相違と推移等があげられる。 4.これらは第1次労働市場で労働力の流動性が一部で制約されていることと深く関連している。 5.第2次労働市場においては、実証分析結果から労働力の流動性による能力差仮説が説得力を有するものと考えられる。 6.こうしたことから、効率賃金仮説、能力差仮説が部分的に各労働市場の実態と企業規模間賃金格差の実態を説明しているものと考えられる。しかし、これらが必ずしも全体を包括的に説明しているとは言いがたく、二重労働市場仮説も合わせて考察することの必要性が指摘できる。 7.次年度以降は、こうした企業規模別平均賃金格差の推移と労働市場の構造変化との関連性について、その動態的側面を理論的・実証的に考察・究明することにより、研究を発展させる予定である。
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