平成13年度における研究実績の概要は以下の通りである。 1.平成11年度、12年度の研究実績を踏まえ、企業規模間の経営業績格差と企業規模間平均賃金格差の関連を検証し、企業規模間の労働力の内実について、理論的・実証的考察を進めた。 2.労働市場の構造は、正規雇用、典型的雇用(Typical employment)と非正規雇用、非典型的雇用(Atypical employment)が存在している。 3.現代の労働市場構造は、核となる労働者とその周辺に属する労働者が存在する。核労働者は、男子基幹労働力に代表されるような労働力で、企業の中核を担う。核労働力の周辺には、およそ3つの周辺労働力がある。第1周辺労働者は、女子一般職に代表される労働力、第2周辺労働者はパートタイマー、アルバイトなどの労働力、第3周辺労働力は、当該企業と直接業務委託契約を行っている労働力と、他企業に雇用されている労働力であり当該企業と直接雇用関係にない労働力が含まれる。 4.中小企業の労働力は、核労働力のウエイトが低く、さらに周辺労働力の中で最も量的に多いパートタイマーに依存する比率が高い。男女別、就業形態別では、男子中高年齢者、女子では既婚者のパートタイマーが中心である。こうしたことが、賃金構造や人件費コストの企業規模間格差と深く関連している。 5.これらは、第一次石油危機以降、過去約30年間進展してきた傾向であるが、それは中小企業の収益状況が大企業に比べて相対的に悪化傾向にあり、賃金支払能力が著しく低下してきたことが、大きな要因である。以上の研究から得られる政策的的含意は、中小企業における周辺労働力の重要性と、そのための政策支援が指摘される。
|