本年度は、台湾を中心に資料収集とその分析行った。平成13年11月台湾の東呉大学において開催されたコンファレンス参加を兼ねて、台北市にほぼ7日間滞在した。この間、台湾の証券取引所、店頭登録市場、証券取引委員会、財務、などの多くの機関を訪ねて、同国の証券市場と会計制度について実にたくさんの教示と提言を受けることができた。この結果、以下のことが判明した。 1. 経済規模全体が、日本に比して大きくはない。 2. ペイ・オフ制度の導入が日本に先じていることなど、投資家の自己責任制度への認識が日本より進んでいる。 3. 直接金融の担い手である投資家の大部分が投資規模の小さい個人投資家であって、長期投資と情報分析能力に優れている機関投資家がほぼ皆無である。 4. 間接金融の主体である銀行と政府との関係が極めて強いことにより、銀行融資が健全市場での判断により必ずしも決定されているのではない。 5. 企業規模が全体的に小さいことや台湾固有の経済発展などが理由と思われるが、いわゆる企業における支配と所有との分離がまだ進んでいない。 6. アジア諸国の経済全般について、欧米のそれに比して、クローニイ(crony) 経済といわれている。台湾の場合、この説明がかなりのケースで的を射ている。 7. 企業情報開示について、インサーダー取引規制システムを含む証券取引制度の整備が充分ではない。 8. 監査人としての公認会計士の独立性については、米国に比して、厳しい訳ではない。
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